誰かが作ってくれた、朝ごはんが食べたい。身体に良い食材を選び、少し手の込んだご飯を作るのは案外面倒です。そんな朝に思いつく場所は、台湾キッチン叙序圓(じょじょまる)さん。
朝ごはんを外で食べる、ちょっと特別なことのようだけれど、台湾では日常のこと。そう教えてくれたのは、台湾出身で叙序圓の店主Jojoさんでした。店の扉をくぐると、そこは台湾の市場さながら、人々が活気よく動く様子、湯気の立つ光景がじんわり懐かしく目に浮かびます。そんな台湾の旅を思い出させてくれる味と場所が、鎌倉の鶴岡八幡宮に向かう参道、若宮大路の沿いのビルの二階にあります。現地なら石畳の奥にひっそりとたたずむ古民家のような店構え。赤い提灯と黄色のドアが食欲をそそります。
この店のオープンは朝の7時30分。数年前からゲストハウスやホテルが増えて、朝ごはんを提供してくれるお店が増えている鎌倉。干物の朝定食屋、テラス席でいただくパンやサラダとコーヒーが飲めるカフェなどあるけれど、叙序圓さんは、台湾中華。駅裏近くのお店で間借り営業していた頃から、家の朝食では、なかなか登場しない中華粥と薬膳スープは、鎌倉住民の間でも話題になっていました。
色々選べる朝のメニューには、お粥が3種とちまきもあります。店内のカウンター席前には、小鉢がずらりと並ぶ。お粥には、この中から選んだ3品がついてくるのが、朝だけの特別なメニュー。薬膳スープと日替わり粥のセットを頼んで、さっきから目が離せない小鉢のなかから選んだのは、干豆腐ときくらげとザーサイ。本日のお粥が鶏肉だったので、さっぱり系を。
そして本日のスープは四神湯(スーシェンタン)この生薬の効いた臓物系のスープは、独特の風味だけど臭みもなく、しっかりコクがあって美味しくて、台湾の香りと味を感じます。ごろっと入った、ほろほろに煮込まれた豚モツやスペアリブをハフハフと食べます。小さなレンゲでお粥もハフハフと。小鉢のおかずに箸を伸ばして、お盆の上での三角形を描く動き。胃袋に沁みわたり、体が熱く火照ってきたような。朝ごはんにはたっぷりなボリュームです。
ふむふむ、テーブルに置かれたスープの解説書によると、四神湯は基本的に、四種類の生薬を使いますが、叙序圓さんでは五種類の生薬で煮込まれているそう。蓮子と芡實というハスの実が胃腸と脾臓の調子をととのえてくれるらしいとのことで、お酒を飲みすぎた翌朝にも良さそう。
けれど、お店の小鉢は、お酒にも合いそうなものばかり。朝からビールなんて頼んで、迎え酒になってもいいんじゃない。そんな風に思えてしまうのは、お粥とスープで心も体も温まって緩んだせい。
11時からは、よだれ鷄や台湾腸詰などのおつまみも揃って、朝粥は13時まで楽しめる。私のような飲み助にもうれしい叙序圓さんです。